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認知症になりやすい家とは?

幹線道路沿いは認知症リスクが上昇する

カナダで実施された、オンタリオ州公衆衛生研究所、トロント大学などによる調査にから、幹線道路の近くに住むと認知症のリスクが高まるとの結果が出ました。研究結果は世界五大医学雑誌である英医学誌「ランセット」に掲載されています。

幹線道路から50メートル以内に住む人が認知症を発症したケースで、その約1割は、交通量の多さが原因になっていると研究は示唆しています。さらに、幹線道路から300m以上離れた所に住んでいる人との比較では、幹線道路から50m以内に住んでいると7%も認知症を発生するリスクが高まりました。

道路から100メートル以内に住む人ではリスクが4%、200メートル以内では2%に下がっているので、その関連性が示唆されています。

幹線道路沿いは認知症リスクが高まる要因

要因1:大気汚染

幹線道路沿いは、二酸化窒素などの窒素酸化物や、PM2.5などの微粒子状物質、タイヤの磨耗から発生する粒子などの有害物質を吸い込んでしまうためです。それが原因となり、酸化ストレスや、神経炎症を引き起こし、認知症の原因となります。

要因2:騒音

幹線道路沿いは、当然騒音が多くなります。特に影響が大きいのは睡眠への影響で、睡眠が断片化されることによって、脳の機能に悪影響を及ぼします。

要因3 身体活動の低下

予防の観点から、有酸素運動など適度な運動が必要ですが、幹線道路は気分良く体を動かすことができません。さらに、冬に家の中が寒いと、適度な運動どころかほとんど体を動かすことさえも億劫になっていまします。

どんな住宅で予防するべき?

高気密な住宅を選ぶ

気密性とは、家の隙間の大きさを表す指標(c値で表します)です。この値が小さいほど、家の隙間が小さく、大気汚染物質が入る隙間がより小さいということになります。住宅選びの際は、c値の値を営業マンに聞いてみてください

百戦錬磨で話上手な営業トークに流されないためにも、数字で見える指標を持つことが大事です。

PM2.5を除去するフィルターを用いた換気設備

気密性が高い住宅でも、換気設備から微粒子や大気汚染物質が入ることが考えられます。そのため、換気設備の性能を確かめてください。PM2.5は、スギ花粉の10分の1以下の小さな微粒子です。花粉だけでなく、PM2.5をも除去できる高性能フィルターを備えた換気設備があれば、健康被害リスクから逃れることができます。

体温をあげる住まい

体温と健康リスクの関連性は大きく、東洋医学では、冷えは万病の元とされています。部屋の中で体温を下げないためには一定の断熱性能が必要となります。断熱性能が低く寒い家では、身体活動の低下や、ヒートショックなど、病気のリスクが高まります。

遮音・防音性能を高める

騒音により睡眠が断続的になり悪影響を及ぼしますが、ではどの程度の遮音性が必要なのでしょうか?

幹線道路沿いの音の大きさは、70dB(デシベル)ほどです。環境省の「騒音に係る環境基準について」によると、専ら住居の用に供される地域では、昼間は55dB以下、夜間は45dB以下と指定されています。つまり幹線道路沿いに家を建築する場合は、最低でも25〜30dB以上は遮音する必要があるのではないでしょうか。

建築では遮音性能の評価には「D値」または「T値(サッシ)」という値で表現します。つまり幹線道路沿いならD -30、ピアノ室を作るにはD -50以上の遮音設計が必要です。そのため、騒音に悩まされない快適な家を建てるためには、防音性の高い建材の使用や間取りを工夫するなど、家の設計から音に対する十分な配慮を行う必要があります。

まとめ

幹線道路沿いに住む人が認知症になりやすい要因

  1. 大気汚染
  2. 騒音
  3. 身体活動の低下

認知症にならない住環境作りのポイント

  1. 高気密にする
  2. PM2.5を除去するフィルターを用いた換気設備
  3. 体温をあげる住まい
  4. 遮音・防音性能を高める

認知症予防には、運動や、食習慣も大切ですが、住環境も影響を与えることが明らかになりました。

ぜひ、住環境作りの参考になれば幸いです!

参照リンク

BBCニュース「幹線道路沿いに居住で認知症リスク高まる=調査」

EXCITEニュース「高速道路の近くに住む人ほど認知症リスクが高い」600万人を追跡調査

環境省「騒音に係る環境基準について」

WELLNEST HOME「大気汚染物質PM2.5を住宅で予防する3大原則とは」

WELLNEST HOME「【不調の理由は家にある?】ヒートショック、PM2.5、カビ、アレルギーを予防できる住宅の秘訣は東洋医学」

WELLNEST HOME「【騒音被害】静かな家を建てるために知らないと損する防音対策」

ラジエントヒーターの特徴

ラジエントヒーターのメリットとは

みなさんこんにちは。

みなさんはラジエントヒーターという調理器具をご存知ですか?オール電化住宅などではIHクッキングヒーターをお使いの家庭も多いかと思いますが、ラジエントヒーターは知らないという方もおられるのではないでしょうか。

ラジエントヒーターの特徴

IHクッキングヒーターとの違い

IHと呼ばれる電磁線を使って、電磁波で調理器具を加熱するのがIHヒーターです。本体は熱くなりません。エネルギーロスが少なく、とろ火から強火まで細かい調節ができることがメリットです。

これに対しラジエントヒーターは、ヒーター自体が加熱して鍋やフライパンを加熱します。IHクッキングヒーターで使えないホーロー鍋や超耐熱ガラス鍋など、使える鍋の種類が多く調理の幅が広がります。しかし、熱効率はIHよりも低いです。

ラジエントヒーター3つの特徴

遠赤外線を放射する

遠赤外線を放射し素材の外面を温めてから、内側にもじっくりと熱を通します。お肉、野菜、魚、素材の美味しさを引き出します。

電磁波が少ない

IHクッキングヒーターは便利で熱効率も高い反面、その電磁波が健康に及ぼす悪影響があるとも言われています。ラジエントヒーターは電磁波(磁場2KHz〜100KHz)が極端に少ないことが証明されています。

今までの調理器具も使える

IHクッキングヒーターと違い、そこがフラットな調理器具がそのまま使えます。

芝山のブログで、調理の様子も公開されていますので、興味のある方は是非ご覧ください!

あずまーるくんめっちゃ真剣勝負(^_-)-☆

 

 

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ナイチンゲールの話

看護の歴史に革命を与えたナイチンゲールの環境管理とは


「クリミアの天使」と呼ばれたナイチンゲールは、今や世界の偉人の一人として数えられています。
ナイチンゲールと聞くと看護師として一生を捧げたようなイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。ナイチンゲールは看護師のみならず、著述家、科学者、統計学者、病院建築家、社会改革者と、様々な側面を持ち合わせた偉人なのです。

そんな彼女が特に力を入れた健康的な住環境のポイントは、「換気」と「保温」でした。

換気と保温の重要性を訴えた

汚れた空気とは

ナイチンゲールの著述によると、汚れた空気とは

①酸素量が少なく炭酸ガスが増えている空気
→ 現代においては、環境基準を大幅に超えた大気汚染物質などが汚れを形成しています。

②室内の病原微生物やホコリや汚れから発生する有機物により汚れた空気
→ 室内にある臭気を放つものは全て、それらの臭気を、人が吸う空気に発散させています。部屋干ししている洗濯物も汚染源になり得ます

③人間が発生する汚れで汚染された空気
→ 呼気や便がこれに当てはまります。

換気の重要性

ナイチンゲールは、機械による換気に頼り過ぎず、自然の外の空気を取り入れることと、窓は下部ではなく上部を開けることを提唱しています。下部を開けると室内が冷えやすくなるためです。また、病人が、吹き抜ける空気に直にされされることのないように気を配るように指摘します。

保温の重要性

換気は重要ですが、部屋の温度まで室外と同じに冷やす必要はありません。暖かくして快適に保つことが重要です。室温は24℃前後が理想的です。特に病気で衰弱している患者は、体熱の生成がうまくできず、自力で体温を保つことが難しいです。
冬場は、首回りや足、お腹周りを温めます。食事は身体を温める食べ物を摂り、内臓から温めてください。適度の運動も、熱生産を高め、筋肉からの発熱を促します。

感染症を予防する衛生管理

寝具類と看護

人間は、肺と皮膚から24時間で少なくとも1.7リットルの水分を排泄していると言われます。その水分には、すぐにでも腐敗を始める有機物が含まれ、寝具や寝衣には汚れが染み付いています。
汗や皮脂、垢やフケなどの老廃物が全て寝具に溜まっていくのです。寝衣はできれば毎日、シーツやカバー類も、週1回は交換するように提唱されています。

壁の清潔

ナイチンゲールは部屋の環境を保つためには壁の清潔を保つことも重要だと言っています。もっとも不潔なのは、壁紙を貼った壁です。壁の汚れを放置し続ければ、換気をしても部屋の空気は常に汚染された状態になり、カビ臭い部屋になってしまいます。
壁紙の壁の張替えなど、メンテナンスを怠らないようにしましょう。

病院建築家としての病棟改革

聖トマス病院のナイチンゲール病棟

ナイチンゲールは「住居の健康」を左右する条件として、①清浄な空気 ②清浄な水 ③効果的な排水 ④清潔 ⑤陽光 の5つを挙げました。
19世紀当時のパリの病棟は、換気への配慮もなく、多くの患者を収容することだけを目的とした病棟でした。これを見たナイチンゲールは、住環境を変えることで感染症を予防したり、回復を早めたりできると考えました。そうして出来上がったのが聖トマス病院のナイチンゲール病棟です。
各階で、病棟内に仕切りをつけて、多くの病室を作らずフロア全体を一つの部屋にしました。そして患者一人一人に新鮮な空気がいきわたるように、全てのベッドを窓際に配置。窓は両面の壁に付いているので、換気と採光がしやすい間取りにしました。

陽光と健康の繋がり

「病人が求める一番のものは新鮮な空気。二番目は陽光です。」とナイチンゲールは言います。陽光には、

  1. ビタミンD(骨を丈夫にし免疫力アップ)やヒスタミン(血液の循環を良くする)の生成
  2. セロトニン(精神の安定)分泌
  3. サーカディアンリズム調整効果(1日のリズムの調整)
  4. 温熱効果
  5. 殺菌効果

などがあり、健康の維持や病気の治療に欠かせない条件と言えます。陽光によって、体が本来持つ機能が活性化し、自然治癒力を高めてくれるのです。

まとめ

19世紀の病棟は、不潔の巣窟のような場所であり、院内で感染症にかかって命を落とすようなケースもありました。入院患者は下層階層の人々で、そこで働く看護師も、まともな教育を受けていない下層の人々でした。そこで独自の看護の研究を重ねたナイチンゲールが、看護の定義を明らかにし、数々の著書も執筆しながら世の中に正しい看護を広めていったのです。
その中でも、病棟や、住居の環境についても健康への影響が大きいことを提唱しました。

現代では、排気ガスや放射性物質等の大気汚染や、電磁波や化学合成物質などの社会毒が蔓延しています。それらを防ぐためにも、住環境の改善は、人間が健康的な生活を送るためには、必須の条件です。

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住環境を変えて子供のアレルギーやアトピーが改善

高断熱の家による症状の改善


高断熱高気密による温度、湿度の管理の仕方で、健康に与える影響は大きく変わってきます。人生の内、食事、睡眠、団欒などの長い時間を過ごす住居の環境は、毎日あなたの体に影響を与えています

住環境を、体にストレスを溜め続ける環境にするのか、体を癒してくれて、毎日疲れをリセットできる環境にするのかは、あなた次第です。

なぜアレルギー、アトピーは増えているのか

昔はこんなにアレルギーの子は多くなかったのに、、、と思っている親御さんも多いのではないでしょうか?実際に日本ではアレルギーやアトピーなどの疾患を持つ子どもは増加傾向にあります。

子どものアレルギーやアトピーなどの疾患は、2013年の文部科学省の調査によると、9年前から12万人の増加で、全児童・生徒の4.5%にも上ります。

『食物アレルギーの児童生徒45万人 9年で12万人増』日経新聞http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1601A_W3A211C1MM0000/

原因は様々

いくつかの、原因と考えられている要素としては、

①食べ物:農薬、食品添加物などの影響

②衣料:化学繊維のものが増えたから

③住居:シックハウスなど

 

様々な要因が絡み合っているため、1つに特定することはできませんが、上記の生活習慣を改善することで予防することはできるのではないでしょうか。また、ある大規模な調査では多くの症状に対して改善効果が見られました。

近畿大学岩前教授の研究データ

膨大なデータからからの研究結果

近畿大学建築学部学部長・岩前篤教授による3万5000人を対象にした調査の結果によると、新築の高断熱高気密住宅の引っ越した人の中で、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、関節炎、アレルギー性鼻炎など15の諸症状について大幅な改善が見られたというデータが出ています。

その中でも、省エネ等級4以上など、より断熱効果の高い住居に引っ越した人ほど、改善効果が高い結果となりました。
回答者は、30代~40代の働き盛り世代とその子ども世代である10代までの男女が中心です。 (http://dannetsujyutaku.com/serial/column/1_index/1_02

衣類から受けるストレスからの解放

ではなぜこのような結果が得られたのかというと、岩前教授の見解では、住宅が暖かくなることで着衣量が減るからだそうです。現代では化学繊維の衣服が増えたことでその影響を軽減できること、そして着衣量自体が減ることで身体への小さなストレスの積み重ねが減るためです。

皮膚が衣類から受けているストレスというのは思いの外大きく、現代衣料の化学繊維やウール、ゴムなど、肌を刺激しやすい素材でできている物が多いです。オーガニックな自然素材でできた衣類を着用するか着衣量を減らせるような住環境にすることがポイントですね。

温度差によるストレスがなくなる

また、基礎体温の上昇も改善に寄与していると考えられます。現代の子どもには体温異常であったり、低体温の子どもが増えています。低体温はアレルギー発症などとの関連性も指摘されています。

部屋と部屋の温度差は、血管や脳に負担がかかり、知らず知らずのうちにもストレスがかかり、基礎体力を奪っていきます。逆に室温が一定になれば、基礎体力が失われにくくなり病気の発生率も低くなると考えられています。温度の差をなくすバリアフリーは、高齢者のみならずお子様にとっても健康を保つ住環境の重要な要素の一つと言えます。

疾患だけでなく生活の質も改善

寝室の環境で睡眠の質を上げる

充実した1日の活力のために、質の良い睡眠は欠かせません。布団の中の最適な環境は、32〜34℃、湿度40〜60%と言われています。もちろん、室温25℃、湿度60%の維持も、できる限りしておきたいですよね。

温湿度を管理することによって、寝具の衛生対策にもなります。布団のケアをしておきたいのは、ダニ対策です。ダニは高温に弱いので、スチームアイロンなどが効果的です。その後、掃除機でダニの死骸等を取り除きます。
布団の中はダニにとっても理想的な環境です。日中はしっかりと乾燥させておきましょう。

不快指数とは

環境省では、省エネのために、夏場のエアコンの設定温度を28℃にするように呼びかけています。夏場に28℃設定というと暑そうなイメージもしますが、湿度によって不快感は変わるのもです。
健康に良い湿度は、40%〜60%と言われており、室温が28℃の場合は、湿度45%で不快指数75、10人いたら一人だけが不快に感じる環境です。せめてこのくらいは保ちたいですね。それ以下の湿度だと、より快適に感じる人が多くなります。
不快指数は温度と湿度がわかれば、簡単にweb上で計算するソフトも利用できます。部屋の温湿度調整のご参考にしてみてはいかがですか?
最近では温度だけでなく湿度も調整してくれるエアコンもあるので、住環境を整えるのには有効ですね。

まとめ

部屋の環境による様々な疾患への影響や、子供への影響は毎日の小さな積み重ねで結果は大きく変わります。家は外から帰ってゆっくりくつろぐ「巣」であると私たちは考えています。この記事が安心で快適な住環境のお役に立てれば幸いです。

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部屋の温度バリアフリー化で、健康も知的生産性も手に入る

部屋の “温度の段差を無くす” のは健康と成功の鍵

室内環境は、「健康」と「生産性」という2つの面において、人生を大きく左右します。

まず日本では、部屋の温度差による健康被害があまり広く知られていません。特に、寒い冬に気をつけたいのが「ヒートショック」。さらに、「仕事の効率を上げるために室内環境に投資する」という考えも、欧米に比べると浸透していないようです。

室内環境の健康への影響は大きい

健康寿命について

2000年にWHO(世界保険機関)が初めに提唱したのが「健康寿命」。健康寿命が「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。寿命までの残りの期間は、「健康ではない期間」ということになります。

日本の平均寿命と健康寿命の差は、男性が約9年(平均寿命80歳、健康寿命71歳)、女性が約12年(平均寿命86歳、健康寿命74歳)です(厚生労働省「厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会資料」(平成26年10月)より)。

平均寿命 健康寿命
男性 80.21歳 71.19歳 9.02年
女性 86.61歳 74.21歳 12.40年

死の直前まで元気でいること、いわゆるピンピンコロリでいるためには、健康寿命を伸ばすことが大事です。WHOでは、「ジャカルタ宣言」で健康を規定する13個の要因をあげています。

  1. 平和
  2. 住居
  3. 教育
  4. 社会保障
  5. 人間関係
  6. 食料
  7. 所得
  8. 女性の地位
  9. 安定的な生態系
  10. 持続可能な資源の利用
  11. 社会的な公正
  12. 人権と平等の擁護
  13. 貧困

まず第一に重要なのが「平和」。その次に「住居」をあげています。健康を保つためにいかに住居が重要視されているかが示されています。

その住環境についての中でも、化学物質、ダニ、カビ、ハウスダスト、窒素酸化物などの空気の汚染問題、結露やヒートショックなどと繋がる温熱の問題があります。

その中でも特に重要なのが住居の温熱環境です。以下の図は「高気密・高断熱住宅への転居と有病割合の関係」を示した表(伊加賀俊治、江口里佳、村上周三、岩前篤、星旦二ほか:健康維持がもたらす間接的便益(NEB)を考慮した住宅断熱の投資評価、日本建築学会環境系論文集、Vol76,No.666 2011.8)です。

転居前 転居後
アレルギー性鼻炎  28.9% 21.0%
 アレルギー性結膜炎  13.8% 9.3%
高血圧性疾患  8.6% 3.6%
アトピー性皮膚炎  7.0% 2.1%
気管支喘息  6.7% 4.5%
関節炎  3.9% 1.3%
肺炎  3.2% 1.2%
糖尿病  2.6% 0.8%
心疾患  2.0% 0.4%
脳血管疾患  1.4% 0.2%

表を参照すると、すべての項目において、高断熱高気密住宅に転居すると疾患が改善していることがわかります。それだけ、住宅の温熱環境と疾患には関係性が不快と言えます。

ヒートショック

ヒートショックとは、急激な温度変化によって起こる健康被害の一つです。冬場の入浴時に特に多く現れます。

1年間で、交通事故による死者数のおよそ4000万人に対し、入浴中の事故死者数は1万4000人と、交通事故の約4倍にのぼります。
急激な温度変化により、血管の収縮と拡張が繰り返され血圧が変動し、血管や脳に負担がかかります。突然のめまいや身体の痛み、頭痛。さらには、失神や心筋梗塞、脳梗塞、不整脈を引き起こす恐れもあります。

ヒートショックは冬場に最も多く、被害者数は12〜1月は、最も少ない8月の10倍にのぼります。暖房で暖められた部屋(24℃)から、寒い廊下を通り、脱衣所で服を脱ぎ、また暖かい湯船に浸かるまでに、血圧が大幅に上下します。
寝ていてトイレに起きた場合も当てはまります。暖かい布団の中から、寒い廊下、トイレへ行く時も血圧に負担がかかり、これがヒートショックを引き起こす要因になるのです。

欧米では暖かい家に住むことが当たり前

欧米においては、脱衣所や浴室、トイレ、刑務所に至るまで、18℃以上が保たれており、暖かい室内に住むのは当たり前の人権と認識されています。それに比べると、冬場、10℃以下になってしまう日本で一般的に多い室温レベルは、発展途上国レベルと言えます。人が普段いる部屋だけを暖房で温めればいいという日本と、建物自体の断熱性能を高めて全体を暖めるという欧米との、考え方の違いがあります。

ヒートショックで亡くなるのは大きな問題ですが、それ以外の若い人、女性や子供でも、身体にストレスが溜まり少なからず悪影響は出ていると言われています。若い人であろうと、他人事ではない問題です。

「暖かい家」は健康を裏付けている

スマートウェルネス住宅等推進事業(国土交通省)の「断熱改修等による居住者への影響調査」から得られた結果によると、

断熱改修によって室温が上昇し、それに伴い居住者の血圧も低下する傾向が確認された。

という知見が得られています。(https://www.mlit.go.jp/common/001158517.pdf

血圧は脳卒中や心筋梗塞とも関連が深く、高血圧の人ほどリスクは高まります。

現状では、そのような人々が、冬とても寒い家で過ごしているのです。住宅の断熱性能を高める事で、病気のリスクを軽減することができるので、これを改善するべきです。

さらに同資料の参考データによると、断熱性能の高い住宅が普及している国では、冬季死亡増加率が低いことがわかっています。最も低いのは、寒冷なフィンランド。高いのは温暖なポルトガルやイギリス、イタリアです。寒冷な国や地域ほど、住宅の性能が高くなったために、冬の死亡増加率が低いというのも、逆説的な話です。この傾向は、日本にも当てはまります。

日本では、最も冬季死亡増加率が低いのは、北海道です。断熱性能の高い住宅の普及率が、最も高いためだと言われています。

これからは、より温暖と言われていて、高断熱住宅の普及が少ない地域ほど、住宅の断熱性能を高めなければなりません。

部屋の環境で知的生産性が上がる

会社の事務員も、学校の勉強も、オフィス、教室などの室内で行われます。暑すぎたり、寒すぎたりしたら集中力も持続しないことは想像に難くないでしょう。室内環境への投資は、どれだけ効果を発揮するのでしょうか。

様々な研究結果

コールセンターの事例

D.Wyonの実験では、室内空気質の良否で、知的作業効率は6〜9%影響すると推定されます。作業者の賃金を考えると、室内空気改善のために投資した金額は、2年以内に回収できると報告しています。

国土交通省の研究

国土交通省で、室内の環境が良くなれば、知的生産性(仕事や学習の効率)が上がるので、その経済効果を図る研究がされています。その中でも、室温が重要になるのは、事務作業や、論理的思考に影響があるといいます。

ある夏に行った実験によれば、25.7℃(わずかに適温より暖かい温度)にした場合に効率が最も良く、28℃の時は15%も効率が落ちたそうです。

子供の学習効率の変化

ある研究では、教室環境を変化させた確認テストを用いた実験が行われました。その結果、

  • 換気量を小→大に変化させたことで、平均点が8〜10%向上。特に、成績下位群で、大きく向上した。
  • 被験者の主観でも、「講義有効時間が向上(=ロスしたと思う時間の減少)」
  • 室温が25℃付近で学習効率のピークを迎え、低温、高温でも、学習効率は低下する

以上のような結果が得られました。室内の温度、空気質により、勉強や仕事の効率も変わることが示されました。室内環境を見直すことで、皆さんのお子さんの成績や、仕事の成果も、向上するかもしれません!

費用対効果は

オフィスコストの構成から

一般的に、オフィスコスト(人件費、賃料、通信費、その他)の中で最も大きいのが人件費です。このことから、人件費の効率を最大化することが求められています。

設備投資の観点から

環境の良い空間のためには建物の省エネルギー性を高めることも現実的に重要です。ある研究では、建物に関わる投資額に対して、建物内で行われるビジネスの価値は1桁以上大きいので、その投資をビジネスの価値向上により回収するのは容易だとしています。

室内環境次第で知的生産性は高まる

室内環境で仕事の生産性を上げるという考えは、これも欧米では取り入れられており、良い環境のオフィスを借りるために高い家賃を借りるという考え方が一般的になっているそうです。

生産性には、室内の温度だけでなく、照明やCO2濃度、天井の高さや窓の位置などの間取りに至るまで、多くの要素が絡みます。部屋を変えることで、子供の勉強の成績や、仕事の効率がアップするかもしれませんね!

体感温度や湿度も重要

「体感温度」は壁や窓の温度で変わる

寒くなると、常に暖房をつけていないと辛いという人も多いのではないでしょうか。エアコンの設定温度も人によって違いますが、それはエアコンの性能の違いではなく、体感温度の違いかもしれません。

エアコンやストーブに、現在の室温が表示されますが、実際の体感温度はそれだけでは決まりません。人の体は、周囲の物と、温度のやり取りをしています。これを輻射(ふくしゃ)と言います。そうすると、周囲の物の温度と、室温の平均値が体感温度になるのです。つまり、室温が20℃あったとしても、窓の表面の温度が10℃しかなければ、体感温度は15℃になってしまいます。

エアコンやストーブの設定温度は25℃、26℃以上にしないとうちは寒い!という方。窓の近くに行くとより寒くありませんか?断熱性能の高い窓や壁にすることが、根本的な解決につながります。

乾燥を防ぐために加湿器だけを使うデメリット

冬になると特に、空気の乾燥が気になりますよね。乾燥は肌の大敵ですし、インフルエンザなどの感染リスクも高まります。冬はどうしてもと、暖房を使うと湿度は下がってしまいますので、その時に加湿器も一緒に使うとします。

室温が20℃で、理想的な湿度と言われる60%にすると、12℃で結露が発生します。一般的なアルミサッシはこれ以下の温度になりがちですので、結露が発生し、部屋の湿度を奪ってしまいます。つまり、断熱性能の低い窓のサッシや壁は、除湿機の役割をしてしまうのです。

加湿器をつけながらもサッシが結露していたら、まるで穴の空いているバケツに水を注ぎ続けているようなものですよね。最近広まってきている断熱リフォームは、乾燥対策のためにも有効なんですね。

まとめ

ヒートショックの問題をはじめとする健康リスク、そして子供の勉強の効率の違いなどを見てみると、室内の温度ってすごく大事なことなんですね。

「健康」や、「子供時代に勉強した頑張り」は、失ってから、時間が過ぎてからでは、二度と取り戻せないものです。そう考えると、室内環境への投資は大きなものですが、それ以上の価値を生み出すと思います。

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