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そんな彼女が特に力を入れた健康的な住環境のポイントは、「換気」と「保温」でした。
ナイチンゲールの著述によると、汚れた空気とは
①酸素量が少なく炭酸ガスが増えている空気
→ 現代においては、環境基準を大幅に超えた大気汚染物質などが汚れを形成しています。
②室内の病原微生物やホコリや汚れから発生する有機物により汚れた空気
→ 室内にある臭気を放つものは全て、それらの臭気を、人が吸う空気に発散させています。部屋干ししている洗濯物も汚染源になり得ます。
③人間が発生する汚れで汚染された空気
→ 呼気や便がこれに当てはまります。
ナイチンゲールは、機械による換気に頼り過ぎず、自然の外の空気を取り入れることと、窓は下部ではなく上部を開けることを提唱しています。下部を開けると室内が冷えやすくなるためです。また、病人が、吹き抜ける空気に直にされされることのないように気を配るように指摘します。
換気は重要ですが、部屋の温度まで室外と同じに冷やす必要はありません。暖かくして快適に保つことが重要です。室温は24℃前後が理想的です。特に病気で衰弱している患者は、体熱の生成がうまくできず、自力で体温を保つことが難しいです。
冬場は、首回りや足、お腹周りを温めます。食事は身体を温める食べ物を摂り、内臓から温めてください。適度の運動も、熱生産を高め、筋肉からの発熱を促します。
人間は、肺と皮膚から24時間で少なくとも1.7リットルの水分を排泄していると言われます。その水分には、すぐにでも腐敗を始める有機物が含まれ、寝具や寝衣には汚れが染み付いています。
汗や皮脂、垢やフケなどの老廃物が全て寝具に溜まっていくのです。寝衣はできれば毎日、シーツやカバー類も、週1回は交換するように提唱されています。
ナイチンゲールは部屋の環境を保つためには壁の清潔を保つことも重要だと言っています。もっとも不潔なのは、壁紙を貼った壁です。壁の汚れを放置し続ければ、換気をしても部屋の空気は常に汚染された状態になり、カビ臭い部屋になってしまいます。
壁紙の壁の張替えなど、メンテナンスを怠らないようにしましょう。
ナイチンゲールは「住居の健康」を左右する条件として、①清浄な空気 ②清浄な水 ③効果的な排水 ④清潔 ⑤陽光 の5つを挙げました。
19世紀当時のパリの病棟は、換気への配慮もなく、多くの患者を収容することだけを目的とした病棟でした。これを見たナイチンゲールは、住環境を変えることで感染症を予防したり、回復を早めたりできると考えました。そうして出来上がったのが聖トマス病院のナイチンゲール病棟です。
各階で、病棟内に仕切りをつけて、多くの病室を作らずフロア全体を一つの部屋にしました。そして患者一人一人に新鮮な空気がいきわたるように、全てのベッドを窓際に配置。窓は両面の壁に付いているので、換気と採光がしやすい間取りにしました。
「病人が求める一番のものは新鮮な空気。二番目は陽光です。」とナイチンゲールは言います。陽光には、
などがあり、健康の維持や病気の治療に欠かせない条件と言えます。陽光によって、体が本来持つ機能が活性化し、自然治癒力を高めてくれるのです。
19世紀の病棟は、不潔の巣窟のような場所であり、院内で感染症にかかって命を落とすようなケースもありました。入院患者は下層階層の人々で、そこで働く看護師も、まともな教育を受けていない下層の人々でした。そこで独自の看護の研究を重ねたナイチンゲールが、看護の定義を明らかにし、数々の著書も執筆しながら世の中に正しい看護を広めていったのです。
その中でも、病棟や、住居の環境についても健康への影響が大きいことを提唱しました。
現代では、排気ガスや放射性物質等の大気汚染や、電磁波や化学合成物質などの社会毒が蔓延しています。それらを防ぐためにも、住環境の改善は、人間が健康的な生活を送るためには、必須の条件です。